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保育体験   七木田 敦(広島大学大学院教育学研究科)

 子育て応援隊の七木田です。
 「なんとか人生に光が見えた。」
 これは,保育体験を終えた中学生の感想です。
 教育改革で揺れる教育界であるが,これだけの感想を生徒にいわせるインパクトのある教科や活動が他にあるでしょうか。現在多くの中学校で,あるいは家庭科の授業の中で,あるいは職業体験の一環として取り上げられている保育体験ですが,むしろ「次世代育成のための先行投資」として積極的に考えてはどうでしょうか。
 
1 保育体験のもたらすもの
 わが国では若い世代の多くが「子どもを欲しくない」理由を「子育てが大変」「面倒」「趣味に時間やお金をかけたい」としています。
 このように話す若者がすでに少子化で育った世代であり,きょうだいはおろか親戚あるいは近隣にも自分より小さい年齢の子どもと触れあう機会は少なかったはずです。加えて昨今の「子育て」に関するメディアの伝え方はストレスの軽減や虐待防止ばかりが強調され,子育ての楽しさや面白さを伝えることが少ないのです。
 保育体験はこのような環境で育った児童生徒にいつの時代でもあった乳幼児とのふれあい経験を回復させようとする試みです。これを通じて子どもを,あるいは子育てを肯定的にとらえ,将来の親への自覚も生まれるものなのです。 
2 中学校の保育体験の実情
 中学校の80%が「保育体験をもっと増やしたい」とする一方で,受ける側の幼稚園保育所では75%が「もう十分である」と言っています。
 幼稚園保育所からは「乳幼児が疲労することがある」「(中学生のかかわりを)見ていてハラハラする」などと意見あって,負担感も高いというところが本音なのです。
 中学校でもわずかの時間で事前指導を行うことが多く,また保育現場との綿密な連携や準備も無いまま交流が終わってしまう場合も多いのです。
 幼稚園保育所側の60%近くが「将来の子育てに役立つ」としてその意義を認めながら,11%が「乳幼児にとってプラスとはならない」としている点もそれを裏付けています。
 保育体験をする生徒の多くが「子どもの見方が変わった」,「再びこのような体験がしたい」といった感想を示し,また乳幼児にとってもプラスな保育体験になるためにも,いまこそ保育体験を明確な教育内容として位置づける必要があります。
 
3 保育体験の課題
 中学生の保育体験の教育的意義を考えたとき,(1)生徒への事前・事後の指導(2)学校と園などとの連携のとり方(3)乳幼児への効果の検証が必要となります。
 これまで保育体験の多くが中学校の主導でなされており,幼稚園保育所はいわば中学生の体験の「場を提供」しているだけではないかと思われてきました。
 たとえば,事前に幼稚園保育所側の積極的なかかわりを促すために中学校家庭科の授業の中で,事前指導として保育士にも保育現場の視点に立った授業を実施してもらうと,中学生は自分たちの乳幼児期や子育てという営みに対して具体的な課題意識を持つということが明らかとなりました。
 このような相互の連携が確立されてこそ,乳幼児への良い影響も生まれるものと思います。
 「子育て支援」「次世代育成」は,すぐには効果のある特効薬はありません。長期的視点に立った「先行投資」として「中学生の保育体験」が今望まれています。
 
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