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「絆」   富田 雅子

 先日、高校生や中学生が乳幼児の託児ボランティアをするという体験の場に居合わせました。
 お母さん方は子育て支援の一環として行われた「ママヨガ」にお子さんを預けて参加します。
 お子さんを預けるときのお母さん方は、ちょっぴり不安そうです。「泣いちゃうだろうな」「ごめんね、すぐくるからね」「ちょっとだけ待っててね」「行ってくるね」複雑な思いを抱いて託児室を後にするお母さんたち。特に乳児をもつお母さん方の不安は大きいようです。
 案の定、しばらくすると託児室は泣き声の大合唱。あちらこちらから泣きじゃくる声が響きます。6か月のS君は、託児に来るのは3回目。1週間に一度の割合で来ていましたが、毎回泣き止むことはなくお母さんが迎えに来られるまでずっと大泣きです。
 その日も例外ではありません。高校生や一緒に託児をしている保育士さんが交代に抱っこしたりおむつを替えたりしてもずっと泣くのです。何人の高校生や保育士さんに抱っこされたでしょう。
 言葉はよくないのですが「たらいまわし」のような光景。託児室の中で一番多くの人に抱っこされているS君。いろんな人から声をかけてもらいあやしてもらっても「この人はお母さんではない」と泣くのです。
 でも、その日は観念したのでしょうか。抱っこされた保育士の腕の中で30分ほど眠ったのです。そして、目覚めた後は機嫌よく高校生と遊んでいるのです。これまでに見たこともない光景です。
 そうこうしているうちに「ママヨガ」を終えたお母さんが託児室に戻ってきました。
 
 
 S君のお母さんは自分のお子さんが高校生と機嫌よく遊んでいるのをみて、とても嬉しそうに「涙が出そう」と一言。そして、この数週間に託児をしてもらっている間に、これまで親以外の人に抱かれると泣いていたS君が、泣かなくなったことを報告してくれたのです。今度は、こちらのほうが「涙が出そう」です。ずっと泣いていたS君ですが、親以外の人への関心や安心感を獲得していたという事なのでしょうか。泣いてはいるものの、S君の小さな手は抱っこしてくれている高校生の腕をしっかりと握っていましたからいろんな人との関わりがS君を成長させたという事でしょうか。
 そんな成長を見せてくれたS君を抱っこして帰るお母さんの背中はちょっと誇らしげで逞しくも見えました。
 
 子どもは親からの愛情だけではなく多くの人からの愛情で育っていくと言われています。泣きながらも抱っこしてくれている高校生の顔を縋るような視線でずっと見つめてていたS君。
 泣かれても泣かれてもずっと抱きしめてあやしていた高校生。
 長い時間S君を抱っこして痛くなった腕をさすりながら「母さんって大変なんだなー」と感想を述べた高校生。
 S君と高校生の絆に心があったかくなった一日でした。
 
 
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