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「箸の持ち方」   津川 典子

 先日、運転しながら聞いていたラジオから、「今、箸をちゃんと持てる日本人は、3割しかいない」という声が聞こえてきました。
 どうやら矯正箸のコマーシャルだったようです。
 「箸の持ち方」は、いつの時代も大きなテーマのようです。皆様はどうでしょうか?
 保育の世界でも2歳にはもう箸が持てるのだから・・・と、箸を使っている園もあります。
 また、矯正箸を持たせていたら、普通の箸がちゃんと持てないという話も聞いたことがあります。
 いったいどうしたらいいのでしょうか・・・。
 
 
  「日本食文化」などを意識して、ついつい「箸を持つこと」を特別なことのように感じてしまうのですが、「箸を持つこと」も、身体運動のひとつなのではないかと思うのです。
 「発達は大きな部分から小さな部分へと発達する」と言われます。「箸を持つこと」もそうなのではないでしょうか。
 「箸を持つ」という細かな運動にばかり目を向けると、練習をする、訓練をするということになってしまいます。しかし本当は、身体の大きな部分がしっかりと育つ必要が隠れているのかもしれません。
 
 保育園では、子どもがしっかりと腰を据え、足をしっかり床に着けて座るために、椅子のサイズを調整します。そして、ある程度の月齢になった時には、「手づかみ」ができるような食材を準備するなどして、子どもが自分の手を使う機会も意図的に準備します。
 たとえば、子どもが手のひらで握れる大きさのゆで野菜やパンなどです。しかし、手づかみができるようになっても、全てを子どもに任せてしまうわけではありません。
 子どもができることとできないことをしっかりと見極めながら、丁寧に子どもへと移行していくのです。
 「急がばまわれ」です。
 子どもの身体や心の準備に合わせなければ、どこかにひずみが出てしまうように思います。
 箸の持ち方もそうかもしれません。「手づかみ」ができ、スプーンを上から握るようになり、そのうち上から握った時に親指とひとさし指が伸びてきて、やっと普通にスプーンを持つ準備ができるのです。
 それと共に、姿勢の維持という、大きな体の準備も必要なのです。
  「小事に目を向けて、大事を見失う」ことがないようにしたいものですね。
 
 
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