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「感性を磨く」   富田 雅子

 アキレス腱を切ってから2か月半。これまで装具や松葉杖で足を保護しながらの歩行でしたが、先日やっと自力で歩行ができるようになりました。主治医の先生が「もう大丈夫。今日から歩いてみましょう」と仰ってくださった時には、嬉しさと怖さが半分半分。
 それでも、久々に床の「感触」を素足で確かめることができたのは感激でした。
 
 さて、今日はこの「感覚」とか「感性」について書かせていただこうと思います。
 
 
 ある雑誌で盆栽を見に行った親子の話を目にしました。
 
 父親が3歳の男の子を連れて散歩に行った時、たまたま盆栽の展示即売会に遭遇したとのことです。
 父親は、特に盆栽に興味があったわけではないのですが、せっかくの機会だと思い盆栽を見ながら子どもと歩いたそうです。
 そのうち、「記念に一つ買って帰ろう」と思いつき、子どもと一緒に気に入った盆栽を探し始めました。
 父親はお財布の中身とも相談しながらどれにしようかと選んでいましたが、3歳の子どもにはそのような算段はありません。
 「僕これがいい!」と指差したのは、とても高価なものでした。
 そんな高価な盆栽を買う気など毛頭ない父親は、予算に見合う中でも一番小さな記念の品を買って帰ったのでした。
 
 帰宅した父親が、自分の父親に散歩での出来事を話したところ、「なぜおまえはその高価な方を買ってこなかったのか」と叱ったというのです。
 自分の子どもが、多くの盆栽の中から美しいもの、価値のあるものを見抜く力があったこと、その感性を持っていることになぜ喜びと価値をもたなかったのかというのです。
 この話は、極端な例かもしれません。しかし、祖父が言ったことには一理あるでしょう。
 
 多くの情報があふれる現代において、本物を見抜く目、その感性を持つことは大人である私達にとっても重要な力です。しかし、その感性が大人になって急に身につくものではないことをわたしたちは知っています。
 子どものころから、五感を働かせ感性を養い感覚を磨いていなくては身につかないのです。
 五感を働かせることは、あらゆる危険から身を守ることにもなり生きていく上で大変重要です。
 そればかりか、五感で受け取った情報は、気持ちいい・すがすがしい・嬉しいなどの感情と結びついて人の心を動かし、人生を豊かなものにしていきます。
 誰もが子どもをたくましく心豊かな人間に育てたいと思っていることでしょう。
 そのためには、子どもと一緒に五感を使っていろいろな経験を楽しむことです。一緒に触り、味わい、喜び、そしてそれを言葉にするのです。感性をともなった会話は、子どもの感性を育み心を広げていくことでしょう。
 
 私たち大人は、子どもとの会話を楽しみ自身の感性もまた磨いていきたいものです。
 
 
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