はじめまして。私はただ今大学院生をしておりますが、21年ほど保育現場(幼稚園、保育園)で仕事をしていました。今回、コラムを書かせていただくことになり、「さて、何を書こうか・・・」と思っている時に、いくつかの出来事に出会いました。
先日、ある新聞で、1歳と3歳の子どもさんを持っていらっしゃるお母さんが、「幼稚園では教育をしてくださるので、文字や数を教えてもらえるのでうれしいです。」と言われている記事を読みました。そしてまた別の日に、公立幼稚園の園長先生と「文字」の話をする機会が与えられました。その園長先生は3月まで小学校の教頭先生をされていました。「幼稚園で勉強を教えてもらった子ども達は、すごく自信を持ってるから、こちらがこうしたらいいよと伝えても、なかなか聞いてくれないんよね~。」とのこと。なるほど!と思いました。素人の「字が書ける」というイメージは、「い」なら「い」という形になればいいと思うのですが、「文字」を書くということはとても奥が深いようです。1マスの中にある点線を頼りに、マスいっぱいにきれいに書くということが求められ、筆順を正しく書くということが求められます。そのうえ、「はらい」、「とめ」なども求められます。小学校の先生はそれらのことをすべて把握して教えてくださるのですね。さすがですね。しかし、素人の浅はかな考えで先取りして教えることで、そのプロの指導を拒否してしまうようになるということは、残念なことですね。
じゃあ、乳幼児期にはどうしたらよいのでしょうか?文字を書く前に、子どもは絵をよく描きます。その時期を大切にしたいものです。ただ、絵が描けない子どももたくさんいるのです。いつも同じ絵(たとえば、チューリップとか)しか描けない。なぜそうなるか・・・?
実は、それもおとなが先走りして絵を教えてしまう事が原因なのです。本来、子どもはぐちゃぐちゃと殴り描きをたくさんし、その殴り描きを「○○みたい!」と、たまたま見立てることで絵をつくり上げ、技を蓄積していきます。そしてその技は応用範囲が広い。だから、教えられず、自分で見立てながら絵を楽しんだ子ども達は、自分の思いを絵として表現することができるようになるのです。おとなが先走って教えないこと、そして子どもが自発的に活動することが大切なのですね。
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